研究概要 |
航空機や原子力機器など一般の構造物は使用中に繰り返し負荷や突発的な過負荷を受ける可能性がある.したがって,構造物の安全性や破壊に対する余裕度を正確に予測するためには使用される材料の変形と強度についてのひずみ速度依存性を調べ,一般的な負荷に対しても対応できるように方程式として定式化する必要がある. 本研究は実用上の意義も大きい金属材料であるSUS316ステンレス鋼やA5056アルミニウム合金などについて,その粘塑性変形特性とひずみ時効特性の温度依存性について実験的に調べるとともに,ひずみ時効を考慮した弾粘塑性モデルによるシミュレーション解析を行い,温度とひずみ速度が種々変化する場合の材料の変形応答を精度よく予測する手法の確立を目指している。 本年は、コンピューター制御による電気油圧サーボ制御の疲労試験機に、熱風器を利用して試作した試験片の加熱システムを設置し、室温から250℃までの温度範囲にて、ひずみ速度1×10^<-3>〜10^<-6>(1/s)の範囲で単軸引張りおよび応力緩和試験を行った. その結果,SUS316ステンレス鋼の粘性と時効は温度の上昇によってほぼ直線的に減少すること,時効は200℃程度でほぼ消滅することなどを明らかにし,結果に基づいて粘性関数とひずみ時効とを温度の関数として定式化して過応力モデルに組み込んだ。 以上の検討から得られた温度とひずみ時効の効果を含む非弾性構成モデルによる解析結果と実験結果との比較検討が行われ、SUS316鋼について行われた検討範囲内での良い一致が見られた.
|