研究概要 |
本研究では初年度の研究成果より得られたTi-Ni系形状記憶合金の熱処理による組織制御技術及びそれに伴う形状記憶機能特性の変化などの知見を基に更に優れた機能材料となるよう組織制御実験を進めた.具体的には,本年度は熱処理は溶体化しただけのものと形状記憶処理の温度と時間を種々に変えたものの実験を行い,それぞれの熱処理により機械的強度や形状記憶及び超弾性がどのように変化するか,また結晶粒サイズ,析出物,結晶配向等の内部微視組織構造の確認を電子顕微鏡・X線回折法によって行い機械試験前と機械試験後及び疲労過程途中におけるそれらの変化を詳細に観察することによりTi-Ni系形状記憶合金の破壊のメカニズムを明らかにした.合わせて示差走査熱量計による変態点測定を行い機械疲労に伴う形状記憶特性・超弾性及び相変態特性の変化を調査し機能劣化のメカニズムを検討・考察した. 強度評価及び破壊実験は油圧サーボ疲労試験機を用いて静的引張,疲労を扱った.得られた破面を高分解能走査電顕で破面形態観察,X線回折装置でX線パラメータ(回折線半価幅,残留応力,回折図形)を測定し,(1)破面上のX線パラメータと応力拡大係数K_<max>,〓K,破面ひずみε_fとの相関,(2)破面下のX線パラメータの分布と塑性域,K_<max>,〓Kとの相関,(3)X線パラメータと破壊様式の相関,の3つの基本相互関係を明らかにした.ここで,半価幅や残留応力の多点測定のための高精度自動測定を可能とした. これらの知見と組織構造との相互評価をすることにより形状記憶合金の破壊機構を解明し破壊寿命の予測に必要な破壊条件及び破壊機構モデルを提案した.得られた知見のうち一部は疲労実験を主体に後述の研究業績として発表した.
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