| 研究概要 |
本研究では前年度までの研究により得られたTi-Ni系形状記憶合金の組織制御技術や形状記憶合金の安全性,信頼性及び耐久性を保証するための材料強度評価技術をTi-Ni-X三元合金に適用した。Cuを添加したTi-Ni-Cu形状記憶合金は,通常のTi-Ni合金と比較して変態温度ヒステリシスの減少,マルテンサイト誘起応力の低下,また伸び値の増加等の特性が期待されている。この材料の応用利用に際して重要となる因子の一つに信頼性の確保が挙げられるが機械的性質,特に疲労特性を考慮に入れた系統的な研究がなされていない。また本合金は相変態が機能発現に関与しているが,この相変態挙動が負荷(ひずみ)速度にどの様な影響を受けるのかは不明な点が多く,このメカニズムを解明することは本材料の応用利用を考えた場合,安全性・信頼性の点からも最重要となる。
そこで,本年度はTi-Ni-Cu合金について種々の熱処理により機械的強度や形状記憶及び超弾性がどのように変化するのか等,形状記憶機能特性の評価を行った。また,示差走査熱量計による変態点測定を行い機械疲労に伴う形状記憶特性・超弾性及び相変態特性の変化を調査し相変態と変形及び破壊過程の相関関係のメカニズムを検討・考察した。
機械試験及び破壊実験は油圧サーボ疲労試験を用いて荷重負荷速度,荷重繰返し速度を適宜調整して試験し,引張り特性,疲労特性に及ぼす変形速度依存性を調査した。各試験後に得られた破面を高分解能走査電子顕微鏡で破面形態観察を行った。また,破断部近傍領域のX線回折線半価幅及び残留応力を測定し負荷(ひずみ)速度との関係を検討した。
以上得られた知見よりTi-Ni-Cu形状記憶合金の変形及び破壊挙動に及ぼす負荷(ひずみ)速度の依存性を明らかにし相変態を伴う場合の破壊機構モデルを提案した。得られた多くの知見のうち一部は疲労き裂伝ぱ試験結果を主体に後述の研究業績として発表した。
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