研究概要 |
本研究では,Ti-Ni系形状記憶合金を対象として高密度かつ複雑形状付与ができる粉末射出成形法による焼結体の作製条件,特にバインダの選択,脱バインダ条件および焼結条件を検討した.また,放電プラズマ焼結法による焼結条件について検討した.これらの方法で得られた焼結体の機械的性質について調べるとともに形状記憶素子作製のための基礎となる形状記憶特性について調べた. 実験には,原料粉末として平均粒径23μmのガスアトマイズTi粉末および平均粒径2μmのカーボニルNi粉末を用いたが,今年度はガスアトマイズCu粉末も用いて,Ti-Ni-Cu系形状記憶合金についても作製し,その機械的性質および熱・力学特性も調べた.さらに,形状記憶特性を改善するために形状記憶処理の影響についても調べた. 昨年度より詳細に焼結条件および溶体化処理条件を検討することにより,放電プラズマ焼結法によるTiNi合金焼結体では,溶体化処理を行うことにより引張強さ600MPa程度,伸び6%以上の優れた機械的性質を有する焼結体を得ることができた.これに種々の形状記憶処理を施すことにより溶製材に近い引張特性を有し,引張強さ800MPa程度,伸び6%以上の極めて優れた機械的性質を有する焼結体を作製できた.この結果は,これまで報告されている粉末冶金法による結果と比較しても最も優れた結果のひとつである.また,形状記憶合金素子の応用に重要な応力-ひずみ関係,ひずみ-温度関係などを検討した結果,予ひずみ2%で280MPa程度の回復応力を有するTiNi形状記憶合金を作製できた.さらに,Cuを20at%添加することにより,引張強さ500MPa程度,伸び7%程度でTi-Ni系より引張特性はわずかながら劣るものの形状記憶特性については改善できた.
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