研究概要 |
研削加工により強度低下したセラミックスを電気炉で短時間加熱したあとの曲げ強度を測定したところ,セラミックスの燒結温度よりもかなり低い温度(600℃)でかつ数分程度の短い加熱保持時間で顕著な強度回復効果が現れることを見出した.本研究では,強度回復のメカニズムの探求および実用化への検討を行い以下の結果を得た. 1)素材及び焼成条件の異なるアルミナセラミックスについて強度回復効果を調べた結果,結晶粒径が2ミクロン以下で顕著な強度回復が見られたが,粒径5ミクロン以上では強度回復がほとんど起こらなかった.また,粒径9ミクロンのものでは,研削前,研削後,研削後加熱のどれも同じような曲げ強度を示した. 2)研削加工面の残留応力及び加熱後の残留応力を測定した結果,曲げ強度に比べて一桁小さく,残留応力の緩和の影響は小さい. 3)燒結前の圧粉体を加熱することによって強度の増加状況を調べた結果,1000℃以下の加熱温度では,焼成後の強度の数分の一にしかならず,拡散によって結合している部分の寸法はサブミクロンの極めて小さいことが推測される. 以上の実験結果から,粒径の小さいセラミックスでは粒界に存在する欠陥のサイズが小さいため,研削加工により発生した「欠陥」が短時間の加熱によってほぼ再結合して強度回復が顕著に現れること,粒径の大きいセラミックスでは研削加工によって発生した粒径オーダーの欠陥の再結合が不完全となり回復効果が現れなくなることがわかった.
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