研究概要 |
薄板のCNCインクリメンタル成形は,工具包絡面形状に薄板を張出し成形する方法であり,多品種少量生産への対応のみならず,メタルフロー制御をも可能にする成形法として注目されている.この成形法では工具運動自由度が非常に大きいため,適切な工具パススケジュールを自動的に求めるアルゴリズムが重要になるが,このアルゴリズムについては今までのところほとんど明らかにされていない.本研究では,触覚機能とレーザ変位計測機能を有する新しい塑性加工機(知能化CNCインクリメンタル成形機)を開発するとともに,この開発機上で工具パススケジュールを自動的に推論するアルゴリズムを提案し,知能化メタルフロー制御技術の確立をその目的とした.まず,触覚とレーザー計測により成形中の変形情報が把握可能な新しいコンピュータ制御成形機を開発するとともに,成形中の変形情報をもとに変形状態を予測しながら,目的とするメタルフローモード(具体的には目的とするシェル形状)が得られるように工具パススケジュールを自動的に決定する学習アルゴリズムを開発した.次に,薄板を様々な形状のシェルに張出し成形し,その際に計測された変形情報をもとにメタルフロー挙動を予測するプロセスを開発機に学習させるとともに,工具パススケジュールをオフラインおよびオンラインでニューラルネットワークを用いて自動的に決定する2種類のアルゴリズムを完成させた.そして,学習修了後の開発機を用いて薄板を異なる形状のシェルに成形し,メタルフローに起因した不整変形の抑止が可能になるのみならず,高度形状創成の観点から重要になる高精度の自在仕上げ成形が可能になることを初めて明らかにし,本手法によりメタルフロ一制御成形の知能化が可能になることを実証した.特に,スプリングバックの影響をも完全に考慮した工具パススケジュールの自動決定が可能になるという結果は,薄板塑性加工の高精度化を推進する上においても重要な指針を与える成果と考える.
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