研究概要 |
本研究はダイナミックイオンミキシング法により新たな超硬質材料として期待されているC-N系材料を人工関節等の生体適合材料に応用することを目的に膜形成条件および生体での適用を前提とした生理食塩水中での摩擦摩耗特性をはじめとする機械的性質について検討したものである. 本年度得られた結果は以下の通りである. (1) 生体適合材料のTiN上に形成されたC-N膜は大気中,真空中いずれも摩擦係数0.2と低く,5000サイクルの摺動試験にも耐えうる耐摩耗性を示した.このTiN基板とC-N膜の密着性はオージェ電子分光により界面での化学結合によるものと判断された.また,市販のDLC薄膜との比較においても優れた耐摩耗性を示し,DLCに代る新規表面改質材料の可能性を明確にした. (2) 生理食塩水中における摩擦試験機を作製し,生体環境下で起こりうるアルミナディスクとTi基板上に形成されたC-N膜の摺動試験を行った.摩擦係数は0.2程度で大気中,真空中と変わらず低摩擦でありその有効性を示すことができた.摩耗は大気中と同程度進行した.しかし,生理食塩水中の溶出元素の分析をイオン発光分析(ICP)により行った結果,Ti元素の溶出量はわずかであり生理食塩水中でも母材保護のための表面改質材としての有効性を示すことができた.
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