研究概要 |
本研究では,ナノメータオーダ超精密切削加工の汎用化を目指して,各種材料の超精密切削表面粗さを,到達限界表面粗さの検討に力点をおきながら,実験的に検討した.実験では,軟質金属(AlおよびAl合金,無酸素銅等,金),プラスチック(光学関係レンズを中心),非晶質金属(無電解ニッケルリン),鉄鋼(SUS304)等の各種材料を超精密切削し,その表面を顕微鏡やSEMで観察するとともに,WYKOやAFMで仕上面粗さを調べた.その結果,以下の事柄が明確になった. 1) 仕上面は,スクラッチ・微小痕,粒界段差,微小うねり,バイト先端転写条痕によって構成される.一部のAl合金を除く材料では,スクラッチ・微小痕はほとんど見られなかった. 2) あるバイト送り速度までは,バイト送り速度を小さくすると,仕上面粗さは小さくなる.しかし,あるバイト送り速度以下では,ほとんど変化しなくなり,限界仕上面粗さに到達する. 3) 到達限界粗さには,切削速度や切込みは大きな影響を及ぼさない. 4) 到達限界仕上面粗さは,工作物材料によって異なるが.一部のAl合金で形成されるスクラッチ・微小痕を除けば,9nm(Rmax)から5nm(Rmax)の範囲になった. 5) 到達限界仕上面粗さ状態における粒界段差は5nm(Rmax)以下,バイト先端転写条痕粗さは1nm(Rmax)から3nm(Rmax)となった. 6) 非晶質金属と金での到達限界粗さの状態では,粒界段差が発生しない,あるいは,ほとんど発生しない.このため、非晶質金属や金の到達限界仕上面粗さは,他の金属材料よりも良くなる. 7) 到達限界仕上面粗さ状態の仕上面の500nm角をAFMで測定した結果によれば,AlおよびAl合金や無酸素銅では,表面は粒子状になっていた.これに対して,金では,バイトの転写条痕が明確に見られ,金の延展性が大きく影響していることがわかった. 8) SUS304の超精密切削では,切削速度が非常に遅い場合でも,バイト摩耗が大きく,超精密切削は,非常に困難であることが確認された. (講演発表) 安井他: 超精密切削限界仕上面粗さの実験的検討-各種材料の限界仕上面粗さについて-, 1997年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集(1997)15 安井他: 超精密切削における切りくず形成最小切込み深さの実験的検討-切りくず幅の観察-, 1998年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集(1998)584 安井他: 超精密切削における切りくず形成最小切込み深さの実験的検討-バイト刃先形状の影響-, 1999年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集(1999)掲載待 他5件
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