研究概要 |
単結晶シリコンの異方性エッチングを用いると,特定結晶面から成る形状が容易に得られるため,高精度な加工が行える.しかし,マスクもエッチング液に侵されてしまうため,本加工法はミクロンオーダの微細形状加工に限って適用されている.本研究では,機械加工で予め所望の形状に加工してからエッチングを行うことで大規模かつ高精度な形状を創成する方法を検討した. エッチングに先だって,へき開を利用した加工を行った場合の形状精度評価を行った.(110)シリコンウェハをへき開すると,へき開面である(111)面は,基板に対して垂直の側壁を構成する.(111)面はウェハ面内で70.5度で交わるような2方向に存在するため,例えば平行四辺形が容易に得られる.実験の結果,数mmの範囲では特定結晶面からなる高精度形状が得られることがわかった. また,異方性エッチングで得られる形状の精度評価も十分に行えていないことから,エッチングのみの結果について評価を行った.その結果,(100)ウェハに加工したV溝は理論どおりの70.5でありことがわかり,結晶軸に対するマスク方位誤差が0.5度以下であれば,表面粗さ20nm程度が容易に得られることがわかった. 次いで,厚さ10mmの(100)シリコンを準備し,これに成形砥石で70.5度のV溝(深さ4mm)を加工した.これをエッチングして大規模な単一結晶面創成を試みた.エッチング時間が長くなることから,一般的な酸化膜ではなく,タングステン薄膜をマスクとして用いた.しかし,このマスクがエッチング中に剥離してしまい,十分なエッチングが行えなかった.しかし,仕上げ面をSEM観察したところ,砥石による加工痕がエッチングの進行に伴って滑らかになっていく様子がわかり,マスクを工夫することで高精度な形状が得られる見込みを得た
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