研究概要 |
平成10年度は、試作したエアースピンドルユニットの前部ジャーナル軸受を対象として、空気膜,ブッシュ、ハウジング部分の温度、軸受内二個所の圧力,主軸およびハウジングの変位を測定した.この目的は、解析における合理的な計算領域の大きさや境界条件を定めるためである. 油を作動流体とする動圧軸受の温度に関しては古くから研究が行われており,空気軸受の場合もその粘性係数が油と大きく異なるだけで、油の場合の研究成果が大いに参考になると考えられる.例えば,油の動圧軸受に関しては,主軸は等温物体とみなすことができるとされてきている.ところが本研究において、主軸端とハウジング端を断熱しない場合とした場合について,ハウジングの軸方向温度分布を測定してみると温度勾配が生じており,その様子が両者で異なることが確認された.本エアースピシドルユニットでは主軸の温度分布を測定することができないので測定していないが,ハウジングが上記のようであれば、主軸も同様であろうことが想像できる.すなわち,温度解析に当たっては,主軸を等温すなわち断熱とはみなせずに,主軸への熱の流れも考慮しなければならない.一方,半径方向の温度分布に関しては,軸受すきまが小さい部分で若干温度が高い傾向が認められるが,ほぼ軸対称な分布と考えることができる. 以上のことなどを考慮して、平成9年度に開発した,圧縮性レイノルズ方程式,エネルギ方程式,熱伝導方程式を有限要素法を用いて求めるプログラムを用いて、圧縮性ゆえに空気膜の温度は条件によっては低下する可能性があること、熱の配分割合が決定できれば二次元問題として概略の温度分布を求めることができることなどを明らかにした.
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