研究概要 |
個人差の大きい高齢者の技能や健康に対して柔軟に対応する生産システムの設計方法の確立を目的とし,まず,高齢者の技能および健康に関する特性を調査し,それぞれの評価方法を確立するための実験を行った結果,以下の成果を得た。 (1)基礎技能としての身体機能と作業能力の関連を明らかにするため,19歳〜57歳までの男女55名について荷役作業の実験を行い,筋骨格系に作用する力学的負荷を作業者ごとに評価するための新しい手法を確立した。ここではその技術を個人適合型人体ダイナモグラフィと命名した。 (2)作業技能としてタイピング作業と微細作業を取り上げ,血圧,筋電位,呼吸などの生体反応を測定した結果,一般に作業の習熟とともに生理的指標値が安定する方向に向かうことが明らかとなった。 (3)健康を阻害する要因として,作業疲労,生理的負荷,精神的負荷を取り上げ,上肢を用いる力仕事や精神作業について繰り返し実験を行った結果,それらの阻害要因が親指手賞面の皮膚血流量や血圧の変化となって現れることが明らかとなった。また,これら生体の客観的指標値に基づいて定式化を行った作業の「つらさ指教」が,作業者の訴える主観的なつらさと極めてよく一致することを確認した。 (4)健康の一指標として皮膚血流量を取り上げ,それと作業運動の関係および血圧との関係を調べる実験を行った結果,身体関節の角加速度を伴う屈伸運動が皮膚血流量を効率的に増大させることが明らかとなった。 本研究で得られた以上の知見は,高齢者のための生産システムを設計する上で極めて有用である。
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