1. 骨の一軸異方性を考慮した白色X線残留応力測定理論を構築した。本法を用いて、牛大腿骨骨幹部の骨組織内の残留応力を測定した。その結果、牛大腿骨骨幹部の骨軸方向に、骨幹前部で約16MPa、後部で約42MPaの引張残留応力を評価することができた。 2. 生体骨肉の残留応力を測定するため、特性X線による骨異方性残留応力測定理論を定式化した。家兎脛骨部分を家兎下肢骨から切り出し、毛を刈取り皮膚や筋肉を残したままの試料を作製した。本法を用いて家兎脛骨の残留応力を測定した。その結果、骨軸方向に約36MPaの引張残留応力が測定された。比較のため皮膚や筋肉を除去して骨表面を露出した試料を測定した場合は、約40MPaの引張残留応力であった。このことから、本法は生体骨の無侵襲残留応力測定にたいへん有用であることを確認した。 3. 中間層を有するコーティングインプラントの残留応力測定理論を構築した。チタン基材に中間層としてチタニア、コーティング層にハイドロキシアパタイトを溶射した試料を作製し、本法を用いてコーティング層と基材の残留応力を測定した。その結果、三次元応力成分を基に算出した最大主応力で評価すると、中間層を介在させることによってコーティング層の圧縮残留応力が減少することが明らかになった。 4. 骨組織にインプラントを挿入した場合の骨リモデリングの三次元数値シミュレーション手法を検討した。そして、人工股関節全置換術後の大腿骨海綿骨リモデリング現象と脊椎固定術後の椎体海綿骨リモデリング現象のシミュレーションを行った。本解析により、いずれの場合も生体にインプラントを挿入することで周囲の骨組織の骨密度が急激に減少し応力が低下することを確認した。このことは、インプラントと骨界面の固定性が術後初期では良好でも長期間経過すると骨組織のリモデリングによって急激に低下してしまう臨床経験をシミュレーションで実証可能となったことを示している。
|