研究概要 |
研究初年度は歯面疲労強度実験装置を設計・製作した. コニカルギヤの歯面疲労強度実験装置はこれまで例がないため,装置は自ら自作した.負荷を自由に設定できる動力循環式とした.テストギヤとマスターギヤの歯車箱を一体とし,ねじり継手を歯車箱の外におくとにより,装置全体の小型化を実現した.この方式は交差軸用動力循環装置としては初めてのものである.潤滑はロータリーポンプによる強制潤滑とし,冷却はファンによる空冷式とした.また,装置は24時間の無人試験を可能にするため,振動・温度を測定しながら,異常が発生した場合に自動停止するよう運転監視制御装置を併設することにした. 次年度は設計・製作した実験装置を用い,コニカルギヤの歯面が疲労破壊を起す負荷を実験的に明らかにした. 歯面の疲労破壊は,歯車の全歯当り面積に対するピッチング損傷割合い,すなわちピッチング面積率で評価した.本研究では,かみあい回数10^7回までの疲労試験においてピッチング面積率3%を越える損傷を起した時点で歯面は疲労破壊したものと考え,疲労破壊を起す負荷を調べた.試験歯車はの材質はSCM440Hであり,調質後歯面研削を施した.歯面の硬度はHv=250〜300であった.歯面疲労強度実験の結果,負荷トルク157〜177[N・m]でコニカルギヤの歯面は疲労破壊することが確認された. 上記の疲労破壊を起す負荷トルクにおいて,試験歯車の歯面の最大ヘルツ応力を計算したところ,1587〜1651[N/mm^2]との結果が得られた.この結果を従来知られている円筒歯車の歯面疲労強度と歯面の硬度との関係と比べたところ,コニカルギヤの歯面疲労強度は同じ硬さの円筒歯車に比べ高いと推測される.これはさらに実験を重ねて結論づける必要があると思われる. 本研究の最終目標はコニカルギヤの強度設計式を求めることである.その第一歩として本研究は貴重な歯面疲労強度データを得ることに成功したと言える.
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