研究概要 |
今年度は課題を遂行するために表面粗さの特徴解析(特に理論的研究)に重点をおいた.接合しようとする物質の表面は,その加工法及び製造法によって様々な特徴を有している.表面を通してのエントロピーの流れを把握するためには表面の特徴抽出が重要な役割を果たす.この特徴を定量的に把握する手法として,現在まで用いられている方法をフーリエ変換に基づいている.代表的な方法としてはガウシアンフィルタがあげられる.ところがフーリエ変換を基礎とする解析法は,系が一様な場合には有効な方法であるが,非一様な表面の解析には有力な方法とはいえない.これはフーリエ変換の積分核が一様性を有しているために逆に局所的な情報の抽出が難しくなっているためである.ところが機械加工面の場合には表面の形状が一様でない場合が多数存在する.このような場合に機械加工面の特徴を抽出する手段としてはウェーブレット解析が注目されている.この方法を用いれば理論的には不確定性関係の許容する範囲内で周波数と位置の情報を同時に得ることができる.フーリエ変換と異なり,ウェーブレットには自由度があり,用途に応じた様々な形態のウェーブレットを構成することができる.そこで今年度の研究においては,Meyerのウェーブレットを用いて離散データを取り扱うMallat変換を行い,系の特徴の非一様性の特徴を抽出する数学的方法を構築し,接合に必要な表面粗さ情報を得ることができた.またMallat変換を周期的境界条件の場合にも拡張し,工学データの処理に適した形の離散ウェーブレット変換係数を得,この結果を学会で発表した.
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