研究概要 |
冷凍機用潤滑油は代替フロンと相溶性があることが要求されるが,相溶性があると潤滑油に冷媒が溶け込み粘度が低下し,油膜厚さが減少するため高粘度潤滑油を使用しても最終的には境界潤滑状態となる.現在エーテル系潤滑油であるポリアルキレングリコールPAG,ポリオールエステルPOEが主に使用されている,しかし,POEは加水分解,電気絶縁性等の問題がある.そのため圧縮機内にモータを内蔵している冷蔵庫,空調機器用潤滑油として加水分解,電気絶縁性にも優れているポリビニルエーテル,PVEが注目されている.本年度はこれらの冷凍機油を用いて以下の様な実験をした. 1.代替フロン用潤滑油の油膜厚さと熔解特性 気体吹き込み可能な転落球型粘度計により潤滑油へのフロンの溶解度,それに伴う粘度変化を測定した結果,粘度低下は冷媒の溶解量だけではなく潤滑油の分子構造が大きく影響する事がわかった.またフロン雰囲気中での油膜厚さの経時変化の測定を行い,フロンの溶解に伴って油膜厚さの減少が急激に生じる事を確認した. 2.摩擦摩耗試験による潤滑油の評価 雰囲気制御可能な点接触滑り試験機及び往復動滑り接触試験機による摩擦摩耗試験を実施した.境界潤滑特性には吸着膜,反応膜,固化膜の影響が大きいが,今回用いたPVEは粘度-圧力係数が大きく固化膜を形成し易いため,吸着膜形成能力に優れているPOEより摩耗特性が非常に優れていることがわかった.しかし,摩擦係数はPOEに比べて高い.摩擦を如何にして低下させるかが今後の課題である.
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