研究概要 |
本研究ではトライボロジー環境下で使用される表面改質材の摩耗特性の内、特に衝撃荷重下での膜の剥離による損傷過程を調べることを第1主眼とした。機械要素材料の衝撃摩耗種々の条件下での損傷については成果発表論文にみられるように本研究室では既に多くの研究を重ねてきた。今回は多種多様な材質をはじめ、多様な皮膜法によって制作された12種(CrN,TiN,TiCN,DLC,PTFE,溶射TiO_2,溶射Cr_2O_3,MoS_2スパッタリング膜,N_2注入処理,ボロナイジング,クロマイジングCr_2O_3焼成膜)の表面改質材について特に衝撃荷重によってうける摩耗・剥離過程を現象的に詳細に試験した。衝撃の加え方は垂直衝撃力の場合と、わずかばかり入射角を与えて衝撃後に表面に微少なすべりを与えた場合の二通りの条件下で、10^6回までの繰り返し衝撃について、その表面劣化の状態をみた。表面改質膜は溶射膜等を除き多くのPVD膜は1〜2μmとごく薄い膜である。従って被膜を施している母材(S45C鋼を使用)の影響が避けられないが、垂直衝撃による場合は母材の変形は伴うが、膜の除去に至るまでの損耗は少ない。母材と薄膜の接着界面での剥離現象も皆無であった。膜の厚さの厚薄に関係なく膜が表面から逐次除去される結果はえられない。しかし僅かな入射角を与えた場合、即ち斜めに衝撃力が加わる場合は、すべての膜が10^6回までの衝撃荷重をうける間に母材が露出するほどの損傷に至り、表面改質膜としての役を果たせない。これらのことから、カムタペットなど実機の機械要素部品への表面改質膜としては膜そのものの機械的特性に加えて衝撃の加えられる加え方に十分な留意が必要なことが明らかになった。尚この研究は今後続けて、同じ成膜について、あらゆる使用条件の下で実験研究を続けていく計画である。
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