研究概要 |
本研究で注目するのは液相や固相からの炭素化経路の中間生成物である炭素系素材(300-800℃で炭素化したもの)、即ち有機物と無機物の中間に位置する炭素前駆体とここで呼ぶものである.この炭素前駆体に相当する素材を繊維系・混合系の複合材として創製し、その摩擦摩耗特性の基礎研究から低摩擦のしゅう動材・軸受材、あるいは逆に高摩擦の摩擦材・ブレーキ材への可能性を検討するものである.また、新しいコンセプト、「炭素前駆体素材が摩擦条件に応じて最適な潤滑あるいは表面状態を自己調整する」ことが可能かどうか、材料設計の点からも解明するものである. 繊維系複合材(多孔性)では,COPNA樹脂/炭素繊維複合材の500℃炭素化物では、曲げ・引張り強度とも炭素化前より数分の一低下するが、耐熱性は向上し、潤滑・無潤滑下において面圧・すべり速度・温度に対して安定な高摩擦(μ=0.15-0.2)低摩耗を示し、摩擦材として有望である.ただし,円筒/平板から円柱/平板へ接触状態を変えた集中荷重条件では強度不足のため摩耗が大きくなり,耐摩耗の改善が必要である. 粒子混合系複合材(非多孔性)では,COPNA樹脂/黒鉛粒子複合材の耐荷重能は黒鉛量と共に増加し,低摩擦(約μ=0.10)になるが、約300℃以上で摩擦が急増し潤滑限界になる.この複合材の500℃炭素化物では、強度は減少するが、さらに低い摩擦(約μ=0.05以下)摩耗を500℃まで維持し、新しいしゅう動材として有望である.その摩擦面には、非常に薄い有効な潤滑膜が認められた.この良好な潤滑性は集中荷重条件でも多少摩耗が増加するものの低摩擦が維持される,ただし,油潤滑下では油に膨潤するため非常に摩耗が大きく,耐油性の改善が必要である.
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