研究概要 |
1.植物の吸水量を計測し,そのデータをもとに基本的な吸水メカニズムを明らかにした。実験用植物としてピレア(苛草科,体長20cm)を用いた。モデルは葉・茎・根の3器官に分け,定常状態において駆動圧として葉部の浸透圧および根部の根圧が,直列抵抗である各部の等価内部抵抗とバランスするとした。茎の抵抗は,顕微鏡による導管直径(30μm)および本数の測定と差圧・流量測定の結果,ポアズイユ流れ(レイノズル数0.024)であることを確認した。吸水量はポトメータ法を用い,根部供給圧の変化に対する吸水流量を測定した。各駆動圧は根部供給圧を減圧し吸水量が零となる圧力ヘッドから算定した。その結果,駆動圧は葉の枚数(面積)に依存しないことがわかった。ピレアの測定より,浸透圧:根圧は9:1,葉:茎:根の等価内部抵抗は1:1:1.5の比であった。これらの実測値を用いて,葉の面積変化に対する吸水量の変化を推定し,実験との比較から本モデルの妥当性を証明した。 2.上記のモデルの妥当性の再確認と環境応答の基礎実験として,根部供給圧および照度の時間的ステップ変化に対する吸水量および蒸散量の応答を調べた。蒸散量・蒸散流量は電子天秤を用いて連続計測した。その結果,吸水は蒸散に対し位相が遅れ,流量変動も小さく,平均流量は照度が小さい場合に蒸散量と吸水量が一致することが判明した。ピレアの場合,2000ルックスの照度変化に対し,吸水の遅れ時間は20分,整定時間は約40分であった。
|