研究概要 |
昨年度は,種々の条件下における吸水量の計測結果を用いて,定常状態における植物の吸水モデルを明らかにした。しかしながら,吸水力の駆動源である蒸散量の測定や測定精度に関連する蒸散・吸水流量の環境変化に対する過渡応答特性の検討が必要であったため,今年度は,スウィートハーブメキシカン(紫蘇科植物)を用いて,高精度な蒸散・吸水量同時計測法の開発とそれを用いた環境応答実験を行った。 1) 蒸散・吸水量同時計測法の開発: 蒸散流量測定用天秤で植物と植物を入れる水槽全体の質量減の計測と,同時に,植物を釣り下げ固定しその質量を計測する(吸水量-蒸散流量)測定用電子天秤の2台の天秤を用いる方法により,瞬間蒸散量・吸水量の同時計測を行った。オンラインデータのコンピュータへの取り込みにより,高精度測定,長時間計測,蒸散・吸水量同時測定を可能にした。 2) 環境応答実験: 蒸散量を直接支配する照度および気温のステップ変化と,吸水量を直接支配する根部状態変化(水槽靜水圧,根部切断,渇水)に対する蒸散流量・吸水流量の過渡応答を計測した。その結果,(1)照度・気温変化に対し,吸水量は蒸散量に対し位相が遅れ,蒸散量は最終定常値を大きくオーバーシュートする。(2)根部変化に対し,逆に蒸散量が吸水量より遅れる。(3)環境変化に対する最終定常値は吸水量はほぼ一致する。(4)渇水状態から通常状態に戻すと,蒸散量は変化しないが過渡状態で吸水量は急増する。(5)根部切断により,大気圧下では吸水量(蒸散量)は微増する。(6)水槽靜水圧の低下により,吸水量は低下するが,約1m以上の真空圧では植物地上部から取り込まれる空気が水槽内へ逆流する。(7)植物の蒸散・吸水流量は個体差があり,植物の萎れは流量を大きく支配する。などを明らかにした。
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