研究概要 |
本研究は平成9年度および10年度の2年間において,渦法と境界要素法(パネル法)を併用した,水平軸風車ロータ翼周りの非定常非圧縮粘性流れに解析手法を確立することにより,翼面上の剥離現象の把握を行い,従来この分野で行われてきた数値計算法では予測が難しかった最適運転状態以外での流れを解析するとともに,風速変動などによる風車ロータの非定常特性を予測する。平成9年度は,一様流中の2次元並進翼を対象に数値解析を行い,渦法の適用レベルの違いならびに,パネル分割法・分割数の影響を詳細に調べた。解析対象とした翼型は,通産省機械技術研究所で風車翼用に開発されたMEL012翼型であり,主にレイノルズ数200,000において解析を行った。その結果,高レイノルズ数の条件において渦法をレベル3で適用した場合,レベル2の場合と比較して翼表面に導入される渦要素の数が極めて大きくなるため,計算量が増大すると共に,流れ場の不安定性が若干増大する傾向が見られた。また,実験結果ならびにポテンシャル解析との比較検討により,レベル3に基づく数値解析コードは,翼型に作用する揚力ならびに抗力を若干過大に評価し,非失速領域においてはレベル2の優位性が見られた。一方,失速領域における翼型空力特性はレベル3の方が定性的に実験値に近い結果を与えた。なお,翼周りの圧力場の解析手法として,計算格子を利用して差分的に解析を行う方法と,流れからの影響を渦法の存在する領域に集約させ,離散化された渦要素のみから任意の場所の圧力を計算する手法を試みている。平成10年度は,3次元流れ場への拡張適用を試みると共に,渦法の適用レベルについても引き続き検討を行う。
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