研究概要 |
混相乱流の大規模渦の数値シミュレーション(LES)においては,分散相(固体粒子や,気泡,液滴など)はふつう流れ解析格子よりも小さなサブグリッドスケール(SGS)にある.単相乱流のSGSモデルでは主としてエネルギーの散逸を担うのに対して,混相乱流ではSGS渦もエネルギーの生成やレイノルズ応力成分間の再配分に寄与する可能性がある.本研究では,分散相(主として固体粒子)の挙動をひとつひとつラグランジュ的に追跡し,一方,流体の乱流を直接数値シミュレーション(DNS)で求め,両者の相互作用を解析することによって,混相乱流のLESのためのSGSモデリングを目的としている.本年度は,乱流のDNSに使う計算格子だけを使って並進・回転をしながら乱流中を運動する粒子を精度よく追跡する方法を確立した.一様流れ場にある球形粒子のまわりの流れで精度を検証し,粒子径と計算格子幅の比が8倍程度であれば,相対速度に基づくレイノルズ数で500程度までの流れが定量的にも妥当に再現された.また,非定常の渦放出についても実験での観測とよく一致し,後流渦のエネルギー収支も数%程度の誤差で算出され,粒子がエネルギー源となる混相乱流のDNSであることを示した.さらに計算コードの並列化を実施し,多くの固体粒子を含む乱流場の処理を高効率化した.また手法を,渦を放出しながら落下する粒子群を含む一様乱流に適用し,個々の粒子の後流だけでなく,粒子クラスターの大規模な後流が発生することが再現され,多重スケール性を有する乱流場のデータベース化が可能となった.
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