本研究は、流動機器の限界性能を支配する、はく離流の制御を対象にしている。壁から流路内に必要に応じて吹き込む傾斜ジェット(渦誘起ジェットという)により、境界層内に縦渦を発生させることで乱流運動を促進し、はく離を制御する方法の確立をねらったものである。 本年度は、まず、逆流の計測法に取り組み、円すいディフューザ内の非定常はく離流に対しX形熱線とスプリット形熱線プローブをそれぞれ1本ずつ使用して、はく離域の逆流発生率を同時計測した。両結果には妥当な対応が見られ、いずれも逆流測定に有用であることが知れたが、3次元性の強い領域では顕著な差が両者間に生じた。この問題は、さらに追究する必要がある。 次に、上述の方法を使用して、広がり角14度の円すいディフューザ内非定常はく離領域の性質を調べ、渦誘起ジェットを施した場合との違いを実験的に明らかにした。 さらに、14度円すいディフューザ入口部に渦誘起ジェット用円管を装着し、はく離の制御に好適な縦渦を誘起するためのジェット吹き込み条件を実験的に調べた。ディフューザ圧力回復率および損失係数から、ジェット流量と全流量の比よりも速度比のほうが主要なパラメータであること、速度比ははく離抑制に必要最小限にするべきであること等が明らかにされた。これらの成果は公表論文、講演論文に提示しているので、剥離制御を進める際の参考になろう。 今後は必要に応じて使用するという、能動制御の可能性についてさらに追究する計画である。
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