研究概要 |
今期に実施された研究は,中型風洞による実験,大型風洞による実験,及び差分法をベースにした数値シミュレーションに分けられる. (1) 第1部 中型風洞による実験:森林模型は,樹幹を円柱で,樹冠を樹幹に巻き付くらせん状の紙片で模擬され,その葉面積指数は6.6と設定された.この森林キャノピー模型を通過した下流域の流れ場に対して,主流方向の時間平均速度及び乱れ度の三次元分布が熱線流速計により測定された.風洞測定部測壁の影響を含みながらも,流れ場は模型下流の広い範囲で樹幹真後ろと樹木間の下流とで異なるなど,複雑な三次元構造をしていることが明らかにされた. (2) 第2部 大型風洞による実験:本実験の森林模型は,円柱の樹幹とアルミの薄板の樹冠部で構成されている.この薄板には,葉面積指数が9となるように多数の穴があけられている.今年度から供用が可能となった大型乱流風洞による実験であり,現時点では十分な実験結果の蓄積がなされていない.しかし,広い測定部形状の特長を生かした実験から,(1)で述べた流れ場の三次元構造の一端が確認されている. (3) 第3部 数値シミュレーション:森林キャノピーを通過する流れ場について運動方程式と連続の式の支配方程式が,差分法により数値解析された.時間進行は,SMAC法に基づく.森林キャノピーを過ぎる流れは,振動する樹冠部により乱れを発生させられることを特徴とする.本数値解析においては,この樹冠部の振動は,バネとダンパーで連結させられた質点系の運動として表現された.各時間ステップ毎に,樹冠部の振動状態と流れの速度場とがリンクされて解かれた.ただし,樹冠部を構成する各要素は,時間変動する葉面積密度に基づく抵抗として流れ場に影響を及ぼしている.得られた計算結果は,(1)(2)の風洞実験において得られた結果を良く表現し,樹冠部の流れ場に及ぼす減速効果が確認された
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