研究概要 |
現在,地球上に生息している生物は,無限とも言えるような長い時間と資源の裏付けのもとに,その組織,構成要素,機能を進化させてきた.このような生物の持つ優れた機能や機構を工学的な立場から究明することは,極めて意義深い,当該研究は,飛行をおもな移動手段とする動物を取りあげ,比較的サイズの大きい鳥類から比較的をサイズの小さい昆虫まで,形態学的な構造を調べ,翼や翅構造と揚力発生機構の関連性サイズ変化を通じて究明することを目的としている. 平成9年度の研究においては,多くの種類の飛行昆虫について,それらの形態学的パラメータを精密に測定し,それらのパラメータとバレンシ数との関係を調べ,飛行昆虫がバレンシ数によって良く整理されることを示した.さらに,走査型電子顕微鏡を使用し,双翅目の昆虫を取りあげ,サイズの比較的大きいアブ,通常のハエ,比較的サイズの小さいショウジョウバエの翅表面の微視的観察を行い,これらに共通する微毛状突起物の構造を明らかにした.これらの構造は翅まわりのマイクロ・フローと関連しており,さらに調査研究が必要である.航空機と比較して飛行動物の羽根は極めて弾性的であるため,鳥類の翼を構成する羽根を取りあげて,低乱風洞を使用して,各羽の空力弾性特性を調べた.ハトの羽に対する様々な方向からの気流応答を調べた結果,羽軸強度には気流方向に対する異方性が認められた.鳥類の羽根に対しても電子顕微鏡観察を行い,羽構造と強度異方性の関連性について現在も研究を進めている.昆虫の自由飛行時における羽根の動きの高速度カメラによる3次元運動解析に関しては,アブとハチについてデータが得られた.従来昆虫の飛行は低レイノルズ数領域であると考えられていたが,R_e=10^3〜10^4の比較的高いレイノルズ数での飛行であることが判明した.
|