管路損失や流体機械の性能換算等に関連した流路壁面の許容粗さは、面の突起と境界層の層流低層との相関からその影響が現れる。円形のボタン型の粗さ要素を並べた場合、粗さ要素の直径に対する各々の粗さ要素の中心間距離が常に2倍になるような粗さ要素にすると、粗さ要素の直径の大小を変えても、粗さ要素の中心を通る算術平均粗さRaは同一値になるが、粗さ要素の直径を小さくすると単位面積当たりの粗さ要素数が増加したことによる粗さ要素の全形状抗力が増加して、流れに対する管摩擦係数λは大きくなる。要素厚さがk=0.18mmと薄い場合は、ボタン型の穴をくり抜き穴の中心間距離が常に2倍になるような穴あきシート状粗面でも算術平均粗さRaはボタン型と同一値になるが、管摩擦係数λの値はボタン型と相違はほとんど見られず、遷移領域での管摩擦係数λはレイノルズ数Reの増加に伴って減少するcolebrookの式と同様の傾向を示した。しかし粗さ要素の厚さがk=0.03mmと厚くなるとボタン型粗面はcolebrookの式とは異なり、レイノルズ数Reの増加に対して右上がりに増加する傾向を示した。いずれにしても凹みのある粗面でも流れは粗面へ遷移する。 粗さ要素の前後の境界層速度分布および摩擦速度に及ぼす要素の厚さや個数の影響について検討した。帯状の二次元粗さ要素ではその粗さ要素の厚さが層流低層内にある場合では、要素前後の境界層速度分布に影響は現れず従来どおり許容粗さの範囲内となったが、要素前後の摩擦速度の変化から粗さ要素前方の摩擦速度に回復する粗さ要素最後尾からの距離は、粗さ要素の単体、複数に関係なく要素の厚さに比例して異なることが分かった。今後は凹みのある粗面について、粗さ要素間での流れの詳細な測定をも加えて行い、各種粗さ要素が存在する流路における粗面域への遷移メカニズムを検討する予定である。
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