研究概要 |
本研究は流面の実用粗面の許容粗さを正確に評価する事を目的として、各種粗さ要素の形状をもつ流路の流れ特性を実験的に調べたもので、円形状の実用粗面に近い高さ(深さ)の粗さ要素を用いた粗面流路の流体摩擦特性の測定と、されに凹面の粗さ要素をもつ流面の流れ特性を明らかにするための風洞実験と可視化実験を行った。前者の実験から、各種粗さ要素からなる粗面壁流路の遷移域の流体摩擦特性を明らかにした(11.研究発表に記載)。後者の凹面の粗さ要素に対しては流路に単独および複数溝を施して、溝の深さの違いが流れの機構に及ぼす影響を調べた。溝の深さはk=1,5,10mmを取り上げ、溝1本の単独溝と溝4本の複数溝のそれぞれについて、境界層内速度分布を測定した。その結果、溝が深いと溝にぶつかる流れの一部は溝内部に入り込み渦を発生させるため下流壁近傍での乱れは少なくなり、溝が浅いと渦を作れずそのまま下流壁にあたり流出するのでその近傍で大きく乱れているようであり、溝内部に出入りする流れおよび溝内部の渦の大きさ、強さ、形状などが、その溝の直後にある壁面近傍の境界層に大きな影響を与え、これが流れを遷移させる原因になると思われる。壁面に突起がある場合は、突起の高さが高いほど、粘性底層を壊しやすくなり流れの粗面への遷移は早まるが、壁面に溝状の粗さ要素がある本実験結果では、粗さ要素の深さが浅い方が遷移は早くなり、突起面と逆の傾向となった。従って、許容粗さを決定するには、粗さ要素の形状も考慮する必要がある。本実験範囲では以上の結果を得たが、今後、溝の幅sに対し、さらに深さkを大きくした場合(k/s>1)の流れや、溝内部の流れ、および溝下流側の壁面近傍の流れをさらに詳細に調べる必要がある。
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