本年度は平成9年度に引き続いて、人為的に発生させたスポッ卜キャビテーションの様相の観察とアルミニウム製試験片を用いた損傷実験を行い、損傷ピット分布および損傷ピット数が流速によってどのように変化するについて、実験データの蓄積を図った。さらに、スポット・キャビテーションによる壊食率(質量減の時間変化率)に関する実験を行うと同時に、キャビテーションの発生位置が固定しているという意味で共通性のある、後方ステップ部剥離せん断層のキャビテーションの様相および損傷特性に関する予備的な実験を行った。スポット・キャビテーションの壊食率に関する実験は、一つのデータを得るのに長時間を要する。このため、今年度中には十分なデータが得ることができなかったが、実験は今後も継続する予定である。 スポット・キャビテーションの場合、平均キャビティ後端位置付近で、周方向に2ヶ所、激しく損傷を受ける領域が存在する。最も激しく損傷を受ける位置での単位面積・単位時間当たりの損傷ピット数は、流速の約5乗に比例して増加する。 スポット・キャビテーション、シート・キャビテーション、および後方ステップ部剥離せん断層のキャビテーションなど、キャビテーションの発生位置が固定している場合、損傷の要因としては、メイン・キャビティ後端から放出される渦キャビテーションの崩壊、メイン・キャビテイから分離されるクラウド・キャビテーションの崩壊、リエントラント流れによるキャビティ後端部の気泡群の崩壊などが考えられる。損傷の要因は共通であるが損傷特性(損傷ピット分布、損傷の速度依存性など)が異なるのは、損傷を引き起こす現象の頻度・強度の差異によるものと考えられる。流れ場の構造と損傷を引き起こす現象との関連を解明することが必要である。
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