通常のCHFよりやや伝熱面温度の高い遷移沸騰領域で、50MW/sqmK以上の高熱流束を実現する気泡微細化沸騰のうちとくにSMEB-Iについて、本研究ではこれを、気泡崩壊時に発生するマイクロジェットによる液体の伝熱面への強力な供給により、固液接触がCHF以上の高温、高熱流束まで安定に維持されて生じるものと考え、気泡の成長、崩壊の挙動を詳細に観察するとともに、その時の圧力変動および伝熱面直上での局所温度変動を同時に測定することにより、マイクロジェットの存在を確認し、さらにその解析から伝熱の機構を考察することを目的とする。 本年度は、水平伝熱面に対しサブクール水を平行に供給する系、及び垂直に吹き付ける系において、伝熱面中央直上の流体温度変動と圧力変動、及び気泡挙動の同期測定を行い、液体供給過程の解析を試みた。SMEB-Iにおいて、気泡の崩壊と同時に伝熱面直上の温度が低下し始めるのが観察され、気泡崩壊に誘起される形で伝熱面ヘサブクール水が突入することが確認された。気泡の崩壊から温度が低温側のピークに達する迄に約0.2msの時間遅れがある。SMEB-Iでの伝熱面に近接する液体の温度変動のパワースペクトルには、高周波側にこの現象に特徴的なピークが現れる。温度変動及び圧力変動のパワースペクトルのピーク周波数と高速ビデオから求めた気泡の崩壊頻度を熱流束に対して整理すると、それらはすべて一つの曲線にまとまり、熱伝達機構がそれらと直接結びついていることが明らかになった。
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