研究概要 |
本研究では,予混合ディーゼル燃焼方式の実現のために提案された傘状噴霧の性状を明らかにした.平成10年度は,平成9年度までに計測された,レーザドップラ流速計(LDA),位相ドップラ流速計(PDA),に加え,粒子画像処理流速計(PIV)による計測を行った.シリンダ内流れと,傘状噴霧の干渉を明らかにするために,試験エンジンに予混合燃焼ディーゼル機関用に製作したピストンを組み込み,モータリングによるシリンダ内流動をLDAにより計測した.このとき,筒内に燃料噴霧を行う場合と行わない場合の2条件で実験を行った.また,燃焼状態を把握するために燃焼実験を行った.PIV実験から,これまで把握できなかった,傘状噴霧の各瞬間での空間的な広がりが明らかになった.シリンダ内流れの計測では,本実験用に試作したシリンダヘッドとピストンにより,複雑なタンブル流が存在することが明らかになった.シリンダ内での噴霧は,噴射量が多くなると流速が大きくなるなどの一般的な結果は得られたが,シリンダ内流れとの干渉を明らかにするにはいたっていない.燃焼実験から,本予混合方式ディーゼル機関では,THC(トータルハイドロカーボン)が従来の結果に比較して,大幅に減少することが明らかになった.しかし,NOxの排出量など従来の結果と比較して異常な傾向を示したものもあった.実験終了後の調査から,今回の実験では燃料がピストンボウルの中に噴霧されておらず,シリンダ壁,ピストン外周部に燃料が付着していることが影響していることが考えられた.したがって,燃焼実験での異常な傾向はピストンと噴霧形状の最適化が不充分であることが考えられ,現在,ノズルの突出し量の変更,ピストン形状の変更を含め引き続き研究を行っている.
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