半導体製膜および光学薄膜の高品位化に有効なクラスターイオンビーム蒸着法で重要となる金属蒸振の超音速膨脹によるクラスター生成につき研究を行った。真空チャンバー内に設置したるつぼ上部のノズルより金属蒸気を高真空下に噴出させ、この際の断熱膨張に伴う過飽和場からのクラスター生成を制動電界法により測定した結果、るつぼ内蒸気圧がある値以上で有意なクラスター生成が行われることが分かった。さらにクラスター生成の最適条件を求めるため、その生成機構について検討を行った。まず分子動力学計算によりクラスターサイズと平衡蒸気圧および表面張力の関係を求め、クラスターサイズの減少に伴うこれら物性のバルクの値からの相違を把握した後、従来の古典核生成理論による核生成・成長の解析を行ったところ、この解析モデルはクラスター生成量を過大に見積もることが分かった。その原因を検討した結果、非凝縮ガスが存在しない本実験系では等温場の仮定が成り立たず、またクラスター生成の出発点である2量体・3量体等の生成・消滅過程の評価に大きな問題があることが分かった。このような小原子数クラスターの生成・消滅速度を分子動力学的に見積もり、加えてクラスタ生成に伴う凝集熱の緩和を考慮したモデル化を行った結果、実験的な傾向をよく説明できることが分かった。さらにクラスタ生成を促進する方法について検討を行い、単純な音速ノズルを超音速膨張ノズルとして過飽和度と蒸気密度の持続時間を制御する方法、および適度なノズル壁冷却の有効性を明らかにした。
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