研究概要 |
レーザによる高速加熱やマイクロ波による高周波数の利用が増えるに伴い,従来のフーリエ熱拡散理論を見直した非フーリエ理論が徐々に注目されるようになってきている。 本研究は,ピコ秒以上の高速レーザにより薄膜の表面を加熱し,その裏面の温度応答をピコ秒以上の速度で測定し,非フーリエ現象を観察すること及び熱拡散率を測定することを目的としている。 本年度は,レーザの加熱速度,温度応答センサー及びアンプ等の応答速度,データの記録速度が現象の観察及び熱拡散率の測定値にどのように関連し,影響しあうかについて予備的実験を行なった。用いた装置は次の通りである。加熱レーザ:YAGパルス幅16ns,センサー:MCT 時定数0.9μs,アンプ:2000倍 時定数0.64μs,フィルタ:カットオフ周波数5MHz時定数0.115μs。ステレス鋼板(SUS304)について厚さ8-90μm間の12種類について熱拡散率を測定した結果、厚さ40μm以上においては文献値と一致し,10μm以下については厚さが薄くなる程小さな値となった。この原因はセンサー等の測定系の時定数によるものであるとして補正したところ,文献値と一致する結果が得られた。また,吸収係数の小さい銅板の場合はレーザの吸収層を付加する必要があるが,そのための方法や材料に注意すべき点が明らかになった。
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