研究概要 |
燃焼器,エンジンシリンダ内の流れはほとんど常に乱流である.乱流は熱および物質の輸送(拡散)を促進する.しかし,乱流がそれらの輸送を逆に抑制してしまうことがごく希に発生する.この現象は逆こう配拡散と呼ばれる.乱流燃焼場で見られる逆こう配拡散は,流れの圧力こう配と密接に関連して発生すると考えられている.火炎の挙動と熱輸送の特性は密接に関連する.本研究の目的は,流れの圧力こう配が燃焼場の乱流熱輸送にどのような作用をするのかを,とくに逆こう配拡散の発現に着目して実験的に調べることである.これにより,乱流火炎の特性を理解し,乱流燃焼を制御する方策も見えてくると考えている. 本研究では,曲り流路を用いて曲率半径方向に強い圧力こう配をもつ乱流場を作り,そこに形成される非予混合火炎の燃焼特性と熱輸送機構を実験的に調べた.平成10年度には,9年度に開発した「細線熱電対変動温度測定法」および「レーザ流速計(LDV)と細線熱電対による速度と温度の同時測定法」の改良に取り組んだ.具体的には,細線熱電対応答補償法の信頼性を高めるため,高精度A/D変換器を導入した.また,LDV用A/D変換器と熱電対用A/D変換器の同期制御,ドップラー信号の周波数解析,熱電対の応答補償,取得したデータの2次処理を高性能パーソナルコンピュータにより行って,計測システムの処理速度と信頼性を向上させた.これにより可能となった乱流熱流束の測定から,逆こう配拡散が発生していることを示す直接の証拠を得て,発現領域を特定した.また,シャドウグラフ法による温度場の可視化から,逆こう配拡散が発生する領域と通常のこう配拡散が現れる領域を比較して,火炎の時空間構造がどの様に異なるのかを明らかにした.以上を総合して,圧力こう配下にある乱流燃焼場の逆こう配拡散を定量的に評価し,その発生機構を明らかにすることができた.
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