面積10cm^2の固体高分子膜を用いた燃料電池と水電解の単セルをそれぞれ製作し、運転装置に組込み、室温から80℃までセル温度や加湿温度を変えて、発電特性と電解特性を計測した。燃料電池は白金を担持した炭素電極を接合した厚さ20μmの高分子膜と、厚さ100μmのガス拡散炭素電極を金メッキSUS316溝付通電板で挟んだ。水電解セルはアノードにPt/Ir触媒電極と500μmのTi繊維焼結給電体、カソードにPt触媒電極と500μmのSUS316繊維焼結給電体とし、厚さ178μmの高分子膜を白金メッキSUS316溝付通電板で挟んだ。燃料電池のセル温度及び加湿温度を60℃の時、電流密度0.8A/cm^2、燃料利用率80%で出力電圧0.59V、出力密度0.46W/cm^2、高位発熱量基準32.1%の優れた発電効率を得た。水電解セルの温度80℃、電流密度1A/cm^2、水電解率6%の時、電解電圧1.78V、電圧効率83.7%、電流効率96.8%、電解エネルギー効率81.0%と言う優れた値を得た。固体高分子膜の湿潤状態により変化する膜の導電率や、水分子の電気泳動、ガス拡散係数を考慮した燃料電池の発電特性の解析では、流れに沿って水素濃度、酸素濃度、水蒸気濃度が変わるため、膜の湿潤状態が大きく変わり、電流分布が特異な挙動を示す事が判明し、水分管理が重要である事を再確認した。発生酸素、水素や水蒸気、水野質量収支、膜と流体との熱収支を考慮した水電解の解析では、水の蒸発潜熱が大きいため、膜の電流流れ方向も流体の流れ方向も最大0.2℃の温度差しかつかず、燃料電池と異なり電流分布や濃度分布は一様である事、測定した過電圧は信頼できる事など重要な結果を得た。現在、電極と固体高分子膜の接合面における触媒も含めた断面構造をSEMなどで調査している。
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