本年度は、まず水平上向き加熱面の上方に一定の間隔を隔てて断熱拘束壁が存在する場合の自然対流の流動と伝熱について実験的検討を行った。はじめに、加熱面と拘束壁との間に生じる自然対流の流動状況を流れの可視化により調べた。その結果、加熱平板まわりの流れは拘束板により乱流化が抑制され、代わりにロールセル状の流れが伝熱面の大部分の領域を覆うことを見いだした。これらの可視化結果を参考に、つぎに伝熱面の局所熱伝達率を測定してみた。その結果、拘束壁の存在によってとくに伝熱面中央部の熱伝達率が顕著に低下すること、また拘束壁と電熱面との間隙が狭くなるにつれて、この伝熱劣化域が電熱面端部へ拡大していくことなどが明らかになった。なお、これらの結果をまとめて機械学会論文集に報告した。 つぎに、拘束壁の無い上向き加熱平板上の自然対流の流動について、レーザーシート法による可視化実験を行なった。これにより乱流遷移開始時に現れる3次元はく離の発生開始位置およびその平均的なスパン方向ピッチを測定した。実験は水および空気を試験流体とし、伝熱面を等温条件で加熱した。その結果、3次元はく離は、伝熱面端部からの距離x、伝熱面と周囲流体との温度差ΔTを基準にとったレイリー数が、水の場合(2〜3)x10^5、空気の場合(7〜10)x10^5になると生じることが分かった。また、はく離のスパンλは、λを代表長さにとったグラスホフ数が、水の場合(6〜9)x10^3、空気の場合(3〜30)x10^4で与えられることが分かった。さらに加熱平板上に形成される境界層内の温度分布および温度乱れの測定を試みた。その結果、乱流域での温度境界層は、板端部からの距離xに対し1/4(水)、1/2(空気)程度の厚さとなることが分かった。今後は、乱流境界層内の輸送機構についてさらに詳しく調べていく予定である。
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