研究概要 |
燃料中の炭化水素成分相互の作用が着火に影響するしくみを明らかにするため,実用燃焼器および模擬燃焼装置の両方を用いた検討を行った.実用燃焼器に関しては主として二元燃料(デュアルフュエル)機関において,メタンを主体とする天然ガス混合気中に微量の軽油を噴射した時の着火,熱発生の状況を調べて高温高圧空気中噴射との差異を明らかにした(石山,池上).また,炭化水素混合燃料の着火過程を明らかにするため,まず,流動反応管を用いた研究を行い,熱分解・酸化が容易なトリデカンを主体とする基材と,実用燃焼機関の典型的な温度圧力では着火が難しい1〜2環芳香族炭化水素基材を混合した燃料の混合気を種々の温度で反応させることにより,ある温度以下ではトリデカンのみが酸化され,芳香族炭化水素は単に不活性な物質として作用すること,しかし,温度が十分高い場合は,トリデカンとともに芳香族炭化水素の一部も着火に必要な低級炭化水素の供給源になることなどを見出した(石山,三輪).次に,希薄予混合気の燃焼によって高温高圧雰囲気を作成する形式の定容燃焼装置を製作し,80〜160MPaの高圧で噴射された燃料噴霧の着火に対する燃料組成の影響を検討した.その結果,燃料-空気の混合速度が非常に速い条件では,燃料の炭化水素組成の違いが着火遅れに影響しにくく,雰囲気温度および圧力が低い条件においてのみ,その影響が顕著に現れることなどが分かった(石山).これらのことから,特に燃料噴霧の着火に関しては,物理的な混合過程を記述したうえで,広範な温度範囲で適用できる酸化過程の化学モデルを組み込むことが着火予測モデルとして妥当であるとの結論を得た.
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