研究概要 |
物体表面における熱伝達特性は,その物体表面の幾何学的形状ばかりでなく熱的境界条件にも依存するため,従来のほとんどの研究では等温または等熱流束条件が基準境界条件として用いられてきた.しかしながら,実際の応用現場では等温または等熱流束条件が満足されることは希であり,従来の研究結果をそのまま利用することはできない.よって,熱的境界条件の影響を反映できる熱伝達表現が今後必要不可欠であるものと考えられる. このような観点から,本研究では任意の温度分布を有する物体からの強制対流熱伝達特性を物体表面温度分布の関数として境界積分表示することを提案した.これまでに本研究により得られた知見を以下に列記する. 1.任意の温度分布を有する物体からの局所熱伝達特性は第1種Fredholm型境界積分で表現でき,この積分核は規定となるいくつかの表面温度分布に対する数値シミュレーション結果から得ることができる. 2.この境界積分表示を熱伝導問題の境界条件として用いることにより,対流・熱伝導連成問題を単に熱伝導問題として境界要素解析することができる. 3.強制対流問題におけるエネルギ方程式の随伴問題を一様なDirichlet型境界条件のもとで数値的に解くことにより,任意の表面温度分布を有する物体からの平均熱伝達特性を定量的に算出することができる. 4.3の境界積分表示を用いることにより,温度の異なる複数の物体の最適温度配置を,高々1回の数値解析結果から決定することができる. 5.摂動法を導入することにより,本方法を自然対流熱問題へも拡張することができ,この場合には任意の境界温度摂動に対する平均熱伝達率の変化を推定することができる.
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