研究概要 |
平成9年度と同様な実験装置,手法を用いて研究を進めた.特に本年度は噴射直後の液体噴流表面の乱れや波動の拡大観察を行い,噴孔内の流動状態との関連を明らかにすることを目的とした.また液体を加熱することによりノズル噴孔内のキャビテーション気泡の生成を促進させ,噴射後の液体噴流の分裂特性がどのように変化するかを明らかにすることも目的とした.実験装置は噴射液体加圧,加熱用のアキュムレー夕,噴射管,インジェクタからなり,インジェクタ先端に取り付けた直径0.5mmの円形噴孔を有するノズルから,水を定常的に大気圧の空気雰囲気中に噴射した.噴射直後の分裂過程を拡大写真法で,噴霧の構造をレーザーシート写真法で撮影した.また分裂長さ(噴射直後の連続液柱部分の長さ)を電気抵抗法で,噴霧のザウタ平均粒径をレーザー回折法により測定した.以上の実験の結果,(1)噴射直後の液体噴流表面の波動は,ハイドロリップフリップが発生する直前の低い噴射圧力では三次元的な複雑な状態である,(2)ハイドロリップフリップが発生すると噴孔軸に平行な波が複数観察され,噴孔内部に見られる流動方向に筋状に伸びる再付着線との相関がある,(3)噴射液体を加熱して液体の蒸気圧が雰囲気圧力以上となる(噴射圧力は液体の蒸気圧以上)温度の液体を噴射すると,噴霧の広がりはノズルからの噴射直後から非常に大きく,分裂長さは小さく,ザウタ平均粒径も小さい,(4)このような加熱液体の噴射時に見られる良好な微粒化特性はノズルの噴孔長さが長い方(L/D=4よりL/D=20の方)が顕著に見られる,(5)噴孔入り口の形状が直角なノズルと丸みをつけたノズルの間には大きな差は見られない,などの知見が得られた.以上のように,本研究により噴孔の形状と液体の加熱を組み合わせた噴霧特性制御手法の開発に関する基礎データを得ることができた.
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