研究概要 |
本年度は,実機吸収器の高性能化のために現在開発を行っている平滑平板型ならびに波型のプレート式吸収熱交換器を対象としたLiBr水溶液の流動状況の可視化観察と,その際に流下する薄液膜の表面ならびに内部で生じる界面活性剤添加によるマランゴニ対流の発生・成長機構について検討するために,He-Neレーザーを光源とした,レーザーホログラフィ実時間干渉法による静止LiBr水溶液膜を対象とした界面撹乱の可視化観察実験を行った. まず,ハイスピードカラービデオカメラを用いたプレート式吸収器の伝熱面上を鉛直下方に流下するLiBr水溶液の流動状況の可視化観察から,水蒸気を吸収しつつ流下するLiBr水溶液は,一様な液膜厚さで流下しているのではなく,界面活性剤添加による吸収の局所的な不均一性のために,断続的な筋状流れを形成していることがわかった.そして,この筋状流れは溶液流量の増加に伴い時空間的に大きく変化すること,また,吸収伝熱性能に大きな影響を与えることを明らかにした. ついで,静止LiBr水溶液膜を対象とした可視化観察から,吸収開始直後(数ミリ秒のオーダー)に液表面にベナ-ルセル状の規則性を持った微小セルが発生することを始めて示した.そして,この微小セルはごく短時間のうちに消滅し,液膜内部の流動を伴った大きな渦を引き起こすことを示した.以上のことから,可視化観察により,これまで不明であった水蒸気吸収時にLiBr水溶液に生じるマランゴニ対流の発生・成長の過程の概略を実験的に明らかにできたと考える.
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