研究概要 |
現在広く用いられているニュートン性流体に代えて乱流抑制効果を持つ界面活性剤水溶液を熱媒体に用いることにより低損失で熱輸送することが可能になると考えられている。しかし乱流状態での流動状況は十分に把握されていないため、可逆的なミセル構造に転移する高分子の振る舞いを実験的に明らかにすることを試みた。界面活性剤としてセチルトリメチルアンモニウムクロリド(略称CTAC)を、カウンターイオンにはサリチル酸ナトリウムを用い、これらを等重量ずつ水に溶解させたものを試料とした。CTAC水溶液の非ニュートン特性を把握するため、濃度・温度・剪断速度を変化させ粘性測定を,さらに単純な剪断流れを平行回転円板により実現し、レーザ小角光散乱法によりミセルの状態の可視化を行った。 粘性測定をの結果、ほとんどの濃度・温度条件において、剪断速度が小さい場合は時間経過とともに粘性が低下するチクソトロピー型変化を示した。また剪断速度が大きくなるに従いチクソトロピー性は小さくなり、定常状態における粘性は低下した。剪断速度が大きな場合、チクソトロピー性は消え、ある値を中心に振動(振動型)した。例外的に時間経過とともに粘性が上昇しある値に漸近するSIS型の変化を示す場合があり、これは剪断速度が小さな場合に生ずる。粘性測定で示された3つの変化型が顕著に現れる条件を再現し,レーザ光の偏向を利用した光散乱法基本とした可視化法を用いた。チクソトロピー型の場合、剪断がかかり始め構造の異方性を示す蝶型の散乱パターンが現れた。振動型の場合には大きな振動を示す条件では蝶型のパターンが繰り返し現れ,SIS型では,剪断がかかり始めるとともに蝶型のパターンが現れ始め、それを維持し続けた。以上の結果より、粘性の変化とミセル構造の異方性との相関から、光散乱法による詳細な解析によりミセル構造と流動特性の相互関係が明らかにされた。
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