将来の燃料として注目されている水素を用い、可燃範囲にある水素予混合気の一様な流れの中に置かれた多孔質円筒バーナから同じ当量比の水素予混合気を吹き出し着火させると、円筒の前方淀み領域に二重の対向流予混合火炎が形成される。本研究ではこの対向流予混合火炎を用い、当量比φの変化にともなう水素火炎の消炎機構を解明し、また混合気を乱流にした場合、乱れが火炎伸長率におよぼす影響を調べることを目的とした。 その結果、水素火炎を火炎伸長によって消炎されるためには相当の流量の水素混合気を供給しなければならないことが判明し、低流量で消炎させるために水素混合気に窒素を混合し消炎しやすくして実験を行った。本研究では、水素燃料の希釈率を80%とし、まず層流の消炎特性を調べた、その結果各当量比における火炎伸長率の限界値は、当量比がほぼ1で消炎火炎伸長率が最も大きくなり、希薄側、および過濃側では減少する。この振る舞いは燃焼速度とよく似ているが、機構はかなり異なっていると考えられる。すなわち過濃側では不足成分の酸素のルイスが1より大きいために、二重火炎は離れた状態で、火炎伸長のみで完全に消炎してしまう。一方希薄側では、不足成分の水素のルイス数が0.33とかなり小さいために、二重火炎は極めて近い距離で、消炎を起こす。これは不完全燃焼あるいは冷却によって消炎するものと思われる。 計画では乱流燃焼まで実施する予定であったが、水素および窒素の配管系の整備、流量コントロールシステムの完成に時間が費やされ、乱流燃焼の研究まで進めることが できなかったが、危険な水素を燃料とした消炎の実験の手続きが確立し、今後乱流火炎の問題にも着手したい。
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