研究概要 |
乱流の直接数値シミュレーション(DNS)は,基礎式をできる限り忠実に数値的に解くもので,実験に比して,より詳細な情報が得られる.しかし当然,DNSにも適用限界があり,その一つは良く知られたように流れのレイノルズ数であるが,もう一つ流体のプラントル数にも制限がある.それは,プラントル数が大きくなるにつれ,温度場を解像するためにより多くの格子点数を必要とする事による.そのため,従来は,空気等の気体に相当するプラントル数1までのDNSは行われていたが,それ以上のプラントル数流体についてのDNSは行われていなかった. そこで本研究は,従来行われていなかった水に相当するプラントル数までの流体について乱流熱伝達のDNSを行い,その結果から,低〜中プラントル数に適用し得る乱流モデル(RANS)を検討することを目的とした. その結果,水に相当するプラントル数5の流体について,平行平板間乱流熱伝達のDNSを行った.シミュレーションの結果,平均温度分布や温度変動ならびにそれらの輸送方程式の収支等を得た.これは世界最高のプラントル数のDNSであり,国際せん断乱流会議で発表し,セレクッテドペーパーとして,学術雑誌に掲載された.また,蓄積した低プラントル数流体についてのDNSデータをも用いて,乱流熱流束のRANSモデルを構築した.構築したモデルは,DNSから得られた平均温度分布やその他の統計量を十分良く予測することができた.この結果は,平成10年に行われた国際伝熱会議に採択され,発表した. さらに,得られたデータをホームページ上で公開し,世界の研究者の利用に供している.
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