極低温装置への微少熱流束を局所的に測定する方法はこれまで確立されていない。この測定にはIn situで熱流束を測定するセンサーが不可欠であるが、関連技術についてこれまで全く報告されていない。本研究ではこうした技術に関する新たな知見を得るために以下の様に行なった。 1. 極低温微少熱流束発生実験装置の開発・製作 300Kから80Kへの標準的な熱流束(1〜50W/m^2)を発生できる装置を熱伝導方式によって製作した。サンプルをはさんで片側にヒーターで熱を加えた時の両端温度差を精密に測定する方式である。 2. 極低温用熱流束センサー性能のより高感度化 熱流束センサー(市販の大熱流束測定用)の感度は原理的に大きくすることが難しいので、より大きな出力を持つ半導体ペルチェ素子を熱流束センサーとして極低温で評価した。また、従来の熱流束測定方式(蒸発量から熱流束の積分値を測定するもの)が可能な装置を作成し、ペルチェ素子を実際に設置して性能を調べた。3社の市販汎用ペルチェ素子について特性評価実験を行なった。その結果、すべての素子が熱電対方式のセンサー出力のほぼ10倍の感度を持つことが判明した。 従来方式のセンサーの中で可撓性があり極低温においても充分に使用できるセンサーがあり、その評価も同時に行なった。感度はペルチェ素子に比べ1/5以下ではあったが、構造上も低温で充分繰り返し使用できうるものであった。これらのセンサーについて、狭い温度範囲ではあるが出力の温度依存性を調べた。80Kから数度の範囲ではあるが、温度依存性をほとんど示さなかった。 3. 多層断熱技術改善のための基礎的なデータ収集 ペルチェ素子を極低温用の熱流束センサーとして評価するためと、多層断熱技術を調べるため、蒸発量測定方式の熱流束測定ができる装置を製作した。
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