制振効果はよいが、制振エネルギーが大きく費用がかかるアクティブ振動制御を対象に、振動エネルギーを電気エネルギーに回生する回生ダンパの開発を目的とする。しかし、アクチュエータの速度が遅い領域では動作せず、回生特性と制振特性が悪化する。さらに高周波領域では、減衰特性が強すぎてしまうことが判明した。そこで、アクチュエータと回生回路の間に共振回路を挿入し、振動の起こる周波数帯では回生効率を向上させ、それ以外の振動数ではエネルギー回生を行わず、振動特性の悪化を防ぐ。また共振回路による回生効率の向上によって、それほど良いアクチュエータを使わなくても十分に実用になる回生ダンパの完成を目指す。 本年度の成果としては、共振回路を制振系とサスペンション系に適用することを前提に、機械系と電気回路が連成振動を起こすことに着目し、最適設計を導いた。この制振効果やエネルギー回生効果をシミュレーションで確かめると共に、簡単な実験装置を製作し、効果を確かめた。さらに回生ダンパーとしては最も実用価値があると思われるエンジンマウントに適用し、ある程度の成果を得た。これらは国内の学会や国際会議で発表し、高い評価を得ている。 しかし低い共振周波数の機械系に対しては、良好な電気共振回路の作製が困難であることが判明した。そこで、昇圧回路の考案とそのテストを開始した。高周波のスイッチングを利用した昇圧チョッパ回路は、エネルギー回生ダンパの実用化に対して、重要な技術になると思われる。これを利用した動吸振器型のエネルギー回生ダンパを作製し、実験を進めた。動吸振器型のダンパは、高層ビルや超大橋などの一般の振動制御で広く使われており、エネルギー回生技術を確立することは今後の振動制御から重要な問題である。
|