油圧式圧電アクチュエータは、積層型圧電素子で駆動される往復運動ポンプとシリンダを組み合わせたアクチュエータであり、小型で大きな力を発生できる。この特長を生かすため、本研究では油圧式圧電アクチュエータを、ブレーキ・バイ・ワイヤーと呼ばれる新しいブレーキシステムにおいて、4輪それぞれのホイールに取り付ける動力源附きブレーキ装置へ応用することを目的とした。平成9年度は、圧電ポンプによって油圧をアキュムレータに蓄圧し、制御弁を用いてブレーキ力(ディスクパッド押付力)を操作する方法を検討したが、この方法ではポンプ・制御弁・アキュムレータの3点セットを必要とするため、小型化が難しい事が判明した。そこで、平成10年度は、制御弁・アキュムレータを省いてポンプ単体で直接にディスクパッド押付力を制御する方法を改めて検討し、シミュレーションで妥当性を確認した。これらの概要を下に記す。詳細は報告書に記されている。 (1) ブレーキ装置の概念設計:圧電ポンプの実験データ、小型自動車用ブレーキ装置に要求される性能等に基づいて、圧電ポンプ、3位置電磁弁、カリパーピストン等の配置及び基本寸法を決定した。 (2) 数学モデルの作成:ブレーキ装置の最適化および動特性調査のため、ポンプ室、ポンプ弁、共振管、カリパーピストンに関する詳細な数学モデルを作成し、C言語によるシミュレーションプログラムを作成した。 (3) ディスクパッド押付力の制御方策の立案:ディスクパッド押付力は非線形特性を有するため、通常のPDでは制御は困難である。そこで外乱オブザーバを用いて、安定で高精度な制御則を導出した。 (4) ポンプの設計:昨年度の方法に比べて今年度の方法ではより大きな出力のポンプを必要とするので、これを改めて設計した。試作を始めたところであり、まだ完成していないので、次年度に継続する予定である。
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