平成9年度に行った研究成果をもとに、平成10年度においてもビークルの乗り心地の見地から、対象とするビークルモデルの車体の振動ができるだけ小さくなるように、ファジィ理論に基づいて自己調整機能を有するアクティブおよびセミアクティブサスペンションの研究を引き続き行った。ここでの研究目的は、ビークルモデルが時間とともに変化したり、あるいは路面形状が急変したとき制御性能が劣化するので、制御装置の構造をビークルモデルの運動状況に応じて適応的に変化させて制御性能の劣化を防ぐものである。そのために、制御性能をさらに向上させるために、走行前方の路面形状の情報を制御装置の設計に取り入れる予見制御を設計し、ファジィ制御に加味し、また前・後輪間の時間遅れに起因して発生する振動の影響を防止するために、前・後車軸に動吸振器を付加した。これにより、タイヤ変位が低減されて車体の振動が非常に小さくなった。ファジィ制御則はif-then型とし、車体の加速度および速度、サスペンション変位および速度などを前件部変数として選択し、ファジィ制御則とスケーリングファクタをシミュレーションおよび実験によってチーニングした。制御対象としては、平成9年度と同様、大型バスおよび小型乗用車とした。前者に対してはアクティブサスペンションをシミュレーションにより設計した。さらに本年度は、1/4ビークルモデルを製作し、空気圧アクティブサスペンションを実験により開発した。このモデルは、非線形2自由度系で表され路面から不規則入力あるいは正弦波入力を受けるものとした。いずれの場合もスカイフックダンパ制御よりも優れた制御性能を示した。後者に対しては、サスペンションの減衰力を切り替えるセミアクティブサスペンションをシミュレーションによって設計した。また、実車の走行試験により開発した制御手法の妥当性を確認した。
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