研究概要 |
本研究では,最初に,内部流による弾性送水管の空間運動の支配方程式,つまり管軸に垂直な面内二方向の横たわみについての非線形連立偏微分方程式に対して,コンピュータによる数式処理援用により幾何学的力学系理論を適用させ,管の横振動の振幅と位相について1階の非線形常微分方程式を求めた.その結果,管の横たわみについての3次の非線形項の影響による空間運動の発生,管上端の水平加振に起因した管の面外振動の縮退などを解析的に明確にした. 次に、内部流による弾性送水管の空間運動を実験的に明らかにした.すなわち,高分解能ビデオカメラによる三次元計測結果をコンピュータ処理することにより、弾性送水管の空間運動の軌道およびその周波数分析を行った.これにより,従来は調べることが不可能であった管の空間運動を実験により定量的に捉えることが可能となり,理論的に予測された弾性送水管の空間運動の特徴を明確に捉えることが出来た. 主な結論として,内部流による管の面外構振動の発生は管終端の集中質量に大きく依存することを理論的ならびに実験的に明確にした.さらに管上端の加振振動数が,弾性送水管の内部流による自励振動の振動数に近づくと,管は面外振動から面内振動に縮退するすることを理論的ならびに実験的に明確にした.すなわち加振方向に直角方向の振動成分が消失する点が,管の面内振動における引き込み現象と本質的に異なる. 管の空間運動の定量的な測定が可能になったことは,今後,この種の研究の大きな飛躍,すなわちカオスを含む複雑な空間運動の解明を進める上で,有力な手段が確立したことになる.そしてこのことは,曲管を含む現実の弾性送水管の自励的空間運動の解明に大きく貢献するものと考える.
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