小型の中立浮力式水中ロボットは、浮遊しているので行動範囲は広いがマニピュレータを動かすとその反力によりロボット自身が動いてしまい正確な位置決めができない。カウンタアームとリアクションホイールを用いれば周囲の流れをあまり乱さずに位置決めすることが可能であるが、作業のために先端に把握した物体まで補償することはできない。本研究では、マニピュレータを2リンクとし冗長性をもたせ、可変抵抗板を有するカウンタアーム、リアクションホイールにより先端に把握した物体を含めたマニピュレータの反力を打ち消すことでマニピュレータの正確な位置決めを行うことを提案した。そして、数学モデルを構築、位置決めに関する計算機シミュレーションを実施した。しかし、付加質量を含む慣性力および流体抗力により反力を打ち消す抵抗板では、動き始めにおける先端物体の慣性力を完全に打ち消すことは困難であった。そこで、抵抗板を翼型にし、揚力を利用できるように改良した。これは魚の泳ぎを模したもので振動翼と呼ばれ、左右に振れるアームの先端に取り付けられた翼に適当な迎え角を与えることで抵抗板より大きな推力が得られるものである。この振動翼をカウンタアーム先端に取り付け、リアクションホイールとともに働かせることで先端に把握した物体を含めたマニピュレータの反力を打ち消すことを新たに提案、その数学モデルを構築した。そして、振動翼に関するシミュレーションにより、スライディングモードによる制御システムを構築するために必要な振動翼の最適な配置法、振動翼が発生することのできる推力およびそのタイミングを調べた。また、シミュレーションでは正確に求めることが難しい振動翼で発生させることのできる流体力を調べるために振動翼模型を製作した。
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