宇宙や海洋など人間が作業できない特殊な環境で使用されるロボットの開発では、環境の特性をいかにうまく利用するかが重要な課題となる。海洋開発では、環境や資源の調査、海洋構造物の設置や補修のために浮力を利用した中立浮力式の水中ロボットの利用が考えられている。しかし、浮遊しているので行動範囲は広いが作業時にマニピュレータを動かすとその反力によりロボット自身が動いてしまい、マニピュレータのアクチュエータのみでは正確な位置決めができないという問題がある。そこで本研究では、周囲の流れをあまり乱さずにこの問題を解決する1つの方法として、マニピュレータの反力をカウンタアーム、マニピュレータ先端に把持された物体の反力をカウンタアーム先端に取り付けられた面積と方向が可変な抵抗板で、それらの反力によるモーメントをリアクションホイールにより補償することを提案し、位置決め制御システムを開発、数値シミュレーションによりその有効性を確認した。しかし、カウンタアームに取り付けられた可変抵抗板による反力の補償では、カウンタアームの動きがマニピュレータに拘束されるため、静水中では可能でも、外乱に対しては弱い。そこで次に、振動翼とリアクションホイールによる補償を提案した。2リンクマニピュレータの第1リンクは、リアクションホイールの負担軽減、カウンタアームの効果をもたせるためアームではなく球形もしくは円柱形のロボット本体とし、第2リンクをオペレーティングアームとした。まず、模型実験により定常状態での揚力係数、抵抗係数が非定常運動する位置決め制御に適用できるか確認し、この結果をもとに水中ロボットの数学モデルを構築した。そして、スライディングモード制御理論を適用して位置決め制御システムを開発し、数値シミュレーションによりその有効性を確認、本体の並進運動を抑えた正確なマニピュレータの位置決めが可能であることを示した。
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