本研究は、従来より用いられている変位センサや力センサを用いずに、圧電素子の変形量、発生力を推定する方法に関するものである。圧電素子に充電される電荷量で制御するとヒステリシスが非常に小さくなることが知られているが、高速な応答をさせる場合には、これらの方法を用いることは困難である。 本研究では、変位のヒステリシスを低減するために圧電素子の内部電荷により外部の導体に誘導される電荷を測定することで、圧電素子の変形量や発生力を推定することを目的とする。本手法を用いることで、圧電素子を使用するシステム内に変位センサや力センサを配置する必要がなくなるため、システムの小型化が期待できる。 本年度は、以下の実験を通して、誘導電荷フィードバックによる圧電アクチュエータの制御法の基礎を確立した。 (1)[変位量・発生力の測定] まず、圧電素子の外壁に取り付けた導体に誘導電荷が発生し、それが変位量に応じて変化することを実験により定量的に確かめた。電流プローブにより測定した電流を積分した結果と、検出用電極に誘導された電荷の関係を調べた。その結果、圧電素子内部に充電された電荷により誘導電荷が発生していることが明らかになった。 次に、誘導電荷と変位の関係および印加電圧と変位の関係を求め、ヒステリシスや感度の変動を明らかにした。誘導電荷と変位の関係は線形性が高かった。 (2)[精密位置決め実験] 検出用電極を用いて測定した誘導電荷をフィードバックすることで位置決め実験を行った。これにより、本手法による位置決め分解能および精度を明らかにした。また、誘導電荷を検出するチャージアンプに逆伝達関数補償法を適用することで、10秒間程度の制御を可能にした。
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