本研究では、変位のヒステリシスを低減するために圧電素子の内部電荷により外部の導体に誘導される電荷を測定することで、圧電素子の変形量や発生力を推定することを目的とする。本手法を用いることで、圧電素子を使用するシステム内に変位センサや力センサを配置する必要がなくなるため、システムの小型化が期待できる。 平成9年度は、本手法による制御法の基礎を確立した。平成10年度は、パラレルメカニズムを用いた微動機構を提案した手法により制御した (1) [変位量・発生力の測定] まず、圧電素子の外壁に取り付けた導体に誘導電荷が発生し、それが変位量に応じて変化することを実験により定量的に確かめた。次に、誘導電荷と変位の関係および印加電圧と変位の関係を求め、ヒステリシスや感度の変動を明らかにした。誘導電荷と変位の関係は線形性が高かった。 (2) [精密位置決め実験] 検出用電極を用いて測定した誘導電荷をフィードバックすることで位置決め実験を行った。これにより、本手法による位置決め分解能および精度を明らかにした。また、誘導電荷を検出するチャージアンプに逆伝達関数補償法を適用することで、10秒間程度の制御を可能にした。 (3) [パラレルメカニズムを用いた微動機構の設計] スチュワート・プラットフォーム型の6自由度テーブルとした。全体の寸法は160×160×85mm、テーブルの可動範囲は100×100×10μmである。共振周波数は、xy方向が50Hz、z方向が190Hzであった。圧電素子からの信号から外来ノイズを差し引くアクティブノイズ低減法により、電源からのノイズの影響を40dB低減した。 (4) [原子間力顕微鏡への適用] 軸間の干渉量、ピッチング誤差に関して、誘導電荷フィードバック制御は変位フィードバック制御と同等以上の運動精度が得られることが明らかになった。フォースカーブを測定した場合のz方向の運動のばらつきは16nmであった。 回折格子を観察した結果、直線性のよい像が得られた。
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